ケース④仮面だけかぶって自分本位に生きる【普通の女の”女”との付き合い方】

まったく悩みなく”女”をできているようにみえる女たちも、みんな本当は悩んでいる――。

だけどその悩みがなぜかあまり共有されないので、みーんな悩んでるんだということがわかりにくくなって孤立を生んでいるんですよね。

なので、普通の女がどうやって”女”をやっているのか、思いつくだけバリエーションを具体的に書き挙げてみることにします。

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普通の女の”女”との付き合い方

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 ケース④仮面だけかぶって自分本位に生きる

最後は、表面上は社会の要請に従って女らしく振舞う。でもその実、内心では自分のカラに引きこもって、自分本位に生きる女のお話をしたいと思います。

このタイプは”女”とがっぷり組み合わず、いったん受け入れて柳腰で攻撃をかわしていく戦法を取ります。私はやなぎみわさんの「エレベーターガール」という写真を通して、実は世の中にはたくさんこのタイプの女がいると知りました。

仮面①家父長制を内側から破壊

ブリヂストン美術館副館長の笠原美智子さんは、この作品を次のように語ります。

若くして諦念としたたかさが入り交じったこの処世術は、確かに作者やなぎみわ本人が語るように「狭い箱の中で社会と縁を切るという、一つのシンボル」だろう。

自分を傷つける社会から身を守りそして生きるために、その社会の価値観を身につけその恩恵を被りながら諾々と服従しているように見せて、実はその社会を拒絶して小さな自分の世界にこもり一時の安息を得る。

笠原美智子「ジェンダー写真論 1991-2017」

やなぎさんの写真「エレベーターガール」が想起させるのは、上のイラスト↑に描いたような、家父長制の支え手になれと強いる親や社会から心を閉ざし、将来を宙ぶらりんにしてやりすごす未婚の女性の姿。

家父長制は結局、女が結婚し子供を産み育てないと維持できない制度。彼女たちがこのまま結婚しなければ、この世界は今の形を保っていられなくなります。彼女たちは家父長制に仕組まれた、最後の刺客なのです。

しかし外から見れば、その物腰は柔らくフワリと社会に溶け込んでいるので、彼女たちが内心では「こんな社会、壊れても知ったこっちゃない」と思っているなんて知る由もありません。

女の裏切りに目を光らせる社会で仮面をつけてやり過ごし、クソったれな世界が瓦解するのを横目に軽やかなステップを踏む。

人に対する信頼をとことん失ってしまったら、”助け合うみんな”や”社会”といった幻想が全部消えて、ただ一つ自分の欲望しか残らないですよね。

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仮面②仮面夫婦

そもそも”女”が仮面なので、このタイプには無数のバリエーションがあります。独身もいれば、既婚もいると思うんですよね。

次に取り上げたいのは、仮面夫婦。「アラサーちゃん」の6巻で出てくる、アラサーちゃんのママです。夫が若い女と遊んでばかりいるけど意に介せず。それどころか、「夜の相手までしなくてラッキー☆」と喜んでさえいます。

だからお父さんが誰と何してようが 全然かまわない

っていうか むしろ性欲をほかの女に向けてくれて

ありがたいっていうか

峰なゆか「アラサーちゃん 無修正6」

アラサーちゃんのママは、今まで夫からも世間からも人間性や個性なんてまったく見てもらえなかったことを逆手にとって、表面上、金のある男の妻をやって安定した生活を手にします。

結婚しながら外で女と遊ぶ男のダブスタも責めるでもなく、むしろ心もカラダも限界まで距離を取るには丁度いいと考えて、なんとか今世は正気のまま生き抜けようと画策します。

大人の処世術:儀礼的夫婦

私はアラサーちゃんのママを見て、昔「結婚帝国」という本の中で信田さよ子さんが「儀礼的夫婦」というのを推奨されてたなぁと思い出しました。

信田:近代家族の理想を実現していると思いながら、実はものすごく傷つけ合っているような夫婦よりも、空洞化はあるんだけれども、非常に距離をとって傷つけないで最大限共存していくほうが、害は少ないと思います。

「機能十全家族」なんてないんだもの。

上野千鶴子、信田さよ子「結婚帝国」

この対談が行われたのは2002年で、私が読んだのは2016年くらいだったと思うのですが当時は、「社会の中に居場所がなくて結婚しなきゃ生きられない女は、”女”のスキルを磨いてやりすごすしかないんだ」と思っていました。

パートナーのことも自分の本心も、問題は山積みだけどなるべく見ないようにして、制度の中に生きることこそが”大人”なんだと。組みふさせられる苦痛を少しでもマシにするために仮面をつける、そんな生き方が成熟なんだって。

仮面をかぶり続けた代償

しかし、対談相手の上野千鶴子さんはこう返すんですよね。

上野 :害が少ないというよりは、子どものほうでサバイバルの知恵を身につけるんでしょう。

逆に言えば、人間関係に対する基本的な信頼感を失うこともあるでしょう。人間関係にシニシズムを持つようになるとかね。

上野千鶴子、信田さよ子「結婚帝国」

上野さんの言葉の重みが、今ならようやくわかります。他者との断絶の中で諦めて生きると、人は社会性がなくなってしまうんですよ!(2回目)

傷つくのがイヤで表面上はニコニコしながら、内側では自分のカラに引きこもって人間への期待を断ってしまう。すると、とことん自分の欲求を追求することしかしなくなって、思いやりや人への共感、助け合いなど、人としてもっとも大切なものを失ってしまうのです。

地獄で我慢してたら自分も鬼に?!

たとえば「結婚帝国」でもちょっと出てくるんですけど、仮面夫婦は夫が働きに出てるうちはいいけど、定年退職して家にずっといるようになったら、妻は殺意を覚えるようになるって。

今までさんざん好き勝手外で遊んで、妻のことなんて見向きもしなかったのに、カネがなくなったとたん、こっち向いて襲い掛かってくるからだと。

信田:本当に悲惨ですよ。男たちが雑誌や本を読んで試しても、たいていは妻に拒否されるんですよ。

お悩みを投稿するならまだ良い方で、多くは弁護士に相談して、「夫婦生活がないのは、離婚の要件になるんだよ」と妻を脅すんです。応じなければ別れるぞと。暴力ですよね。

上野千鶴子、信田さよ子「結婚帝国」

遊んでたって言っても、札束や地位で人の横っ面ひっぱたいて言いなりにさせてきたんだから、まともなコミュニケーションは取れないんですよね。だから老後は妻をたんツボにするために、法律や腕力でもって脅しをかける。

そして妻は経済的に離婚を選択できず、密室の中で夫から逃げ回りながら作る洗剤まぜごはん。

これって、地獄に長年我慢して住んでたら、気付いたら最後は自分も鬼になってました~☆っていう悲劇の結末ですよね?!

仮面②聖母と思わせて毒母

たしかに、女の人に選択肢がほとんどなくて、辛い結婚に耐えかねておかしくなるくらいだったら、仮面夫婦になったほうがマシかもしれない。

だけど、表面的にでも男の原理を受け入れてしまうと、女だってわりとモンスターになってしまうということが最近わかってきました。

それは毒親という言葉が、一般的に使われるようになってきた時期と一致します。

奪われた領域を取り戻すために侵食

夫や世間に絶望して自分のカラに引きこもると、気をゆるした相手、特に子どもと自分の境目はかえってぼやけてしまうのです。

そして自分の欲望を「アナタのため」とすり替えていることにも気づかずに、限界まで削られた領地を取り戻すかのように、子供の人格を侵食し人生を支配しようとしてしまう。

上野千鶴子、田房永子「上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!」

引用:上野千鶴子、田房永子「上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!」

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子どもをぬいぐるみ扱いしたり勝手に一心同体と思ったり、あるいは破綻した心をぶつけるサンドバッグとして使う母親たち。

昔なら個人的な問題として片づけられてきた家族の問題が、実は多くの人々が経験してきた普遍的な事象であったということが、元・子どもたちのネットでの証言から明るみに出てきました。

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まとめ

まとめ
  • 人間に対する絶望が深まると、社会の一員になれなくなる。
  • 社会性を失った人間が家族をもつのは、地獄への入り口。
  • 地獄に長年住んでると、気付いたら自分も鬼に。
  • 自他境界を失った母親は子どもをオモチャにする。
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