生活するということは毎日同じ雑用をこなすことであり、退屈なのが普通です。結婚には恋愛のような刺激はないかも知れませんが、価値観をすり合わせながら他人と生活を共にすることで、互いに支えあう喜びを知ったり、ふとした瞬間に満ち足りた気持ちを感じたりもします。
少しずつ積み重ねた幸せな思い出は、人と人との絆を信じさせてくれるものであり、愛という幻想には私たちの胸の空虚さを紛らわしてくれる効果があります。
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夢に引き裂かれる男たち
しかし家庭が生み出す幸せを女性の領域だとし、男性が家庭的であることをカッコ悪いと考える男性がいます。2017年の秋ごろ、「夫が積極的に家事育児を手伝うと、妻から男として見られなくなる」というつぶやきがツイッターで話題になりました。
ツイッターである男性が投げかけたのは、次のような内容のツイート。
「家事育児を妻に丸投げすると夫婦仲は悪くなるけれど、積極的に手伝うと夫は妻から男性として見られなくなる」
「洗濯物たたんでる旦那と、仕事のできる職場の同僚の男性、どちらに魅力を感じるかという話です」
(引用元:ツイッターで妻たちをトキめかせている “あるハッシュタグ” が大人気! 「育児に積極的なパパは男として見れない」に反抗して生まれました)
「男の夢」には女が必要♡
つまりこの男性は
「仕事で評価され家庭の雑事などにとらわれない男こそ本当の男であり、女性からも魅力的だと思われる」
と信じ、家事に労力を割く男性を負け犬と考えているのです。誰にも迷惑をかけなければどんな夢を見てもかまわないと思いますが、厄介なのはこういった「男の夢」の実現には、女性の存在が不可欠だということです。
自由を謳歌したいなら、せいぜいそのへんの草でも食いながらいずれ野垂れ死んでくれれば文句はないのですが、男性の考える「一人前の魅力的な男」には”家族を養う大黒柱”というイメージも含まれています。
一人で”一家の稼ぎ手”になることは出来ませんから、なりたい自分になるためには頼りにしてくれる女が必要です。しかし誰かのヒーローになるには責任が伴いますし、「一人前の男気分」を味わうためには楽しいことだけじゃなくて、日々の雑用や女とのつまらない会話も死ぬほどこなさなくてはいけません。
憧れのアイツに引き裂かれて
つまり男性の考える「理想の男」には、
- 制度に絡めとられて自分を見失うことのない強さ
- 家族を支える頼もしさ
の両方が含まれているということです。
憧れるだけならいいのですが、本気でなれると信じて頑張ってしまうと「言/行動が真っ二つに引き裂かれ、その事実に気づくことが出来ない」という呪いがかかってしまうので注意が必要です。そのうえ理想と現実に大きなギャップがあるため、消すことの出来ない敗北感にいつも苦しめられるというおまけつきです。
誤ったイメージが男を苦しめる
「男としての魅力が損なわれそうだから、洗濯物をたたみたくない」という男性たちのことを、私は頭ごなしに「むしるぞコラ」の一言で否定するわけにはいきません。彼らはただ単に妻に働かせて自分はラクをしたいと言っているわけではないのです。
僕は何を信じて生きればいいの?
「仕事のデキる男は引っ張りダコ。家にいるのは役立たずの負け犬」
という男性の価値観は、父親世代に対するリスペクトの表れだと思うのです。いつも家にいないけど頼りがいがあって、必死で働いて自分を養ってくれたお父さん。
結婚するということは、自分も父親と同じ「一人前の男」になるということ。「一人前の男」は多少妻に心配をかけるかも知れないけれど、家族を幸せにするために外でがむしゃらに働かなければならないのです。
ぼくのお父さんはね
結婚することや父親になることは、女性だけでなく男性にとっても非常に大きな出来事です。これまでに経験のない新たな役割を与えられるのですから、うまくできなくて相手をがっかりさせてしまうかも知れません。
どう振舞ってよいか迷ったときは、自分の両親の関係や、テレビなどで見た理想の夫婦の在り方を参考にすれば当面大丈夫でしょう。はじめはぎこちなくても、男女が生活することは”自然”なのだから、みんなと同じにすれば間違いないからです。
「洗濯物をたたんだら男じゃなくなっちゃう!」という男性は、本当は素直で理想に燃える頑張り屋さんなんだと思います。ただ現実をちゃんと見る余裕がなく、女性の立場に立って物を考えたり出来ないだけなのです。
お願いぼくを捨てないで
彼らが女性の言葉に耳を傾けられないのは、もちろん女を軽くみているのもありますが、それ以上に自分に自信がないことが原因です。ラッキーな時代に思う存分に”男らしく”振舞えた年長の男性たちと比べて、今の自分は妻を黙らせるだけの十分な稼ぎもありません。
自分の男としての存在価値なんてないも同然なのに、その上妻のいうことをほいほい聞いてしまったら、まるで捨てられたくないあまりにみっともなく媚びる負け犬のようじゃありませんか!
自信のなさを隠すには、一体どうすればいいでしょう? 自分が価値のない情けない男だとわかったら、妻は他の男のところへ行ってしまうかも知れません。家事をしたくないという男性たちが意固地で横暴に見えるのは、ただ単に脳が腐っているだけじゃなく男らしさへの憧れとあふれんばかり妻への愛着のためなのです。
私には「洗濯物をたたみたくない」という男性が、耐えがたい敗北感にさいなまれ、崖っぷちで落ちないように必死に踏ん張っているように見えてしまうのです。憧れと愛着ほど暴力を誘引する要素も他にないと思いますが…。
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ロマンスはバイオレンス
女性の意見がいくら正しかったとしても、正論をやみくもに真正面からブン投げるのは賢い方法とは言えません。彼らの信じる”男らしさ”が、いくら張りぼてで中身のないものだったとしても、今まで必死で信じていたものを失うことは、誰だって痛みをともなうことだからです。
愛してるから殴るんだ
ましてや自分より下でなくてはならない、女のあなたにそんなことを言われたら、自分を否定された怒りと理解してもらえない悲しみで、思わずグッとコブシに力が入ってしまうでしょう。私たちは今現在モロに差別を受けている最中で、このように男性から「都合のいい存在であってほしい、いや女はそうあるべきだ」と思われることはその典型です。
しかし同性に心を開けない文化にいる男性にとって、パートナーは世界でたった一人自分を肯定してくれる存在であり、裸の自分を見せられる唯一の心のよりどころなのです。
男性のロマンチックな愛情は、妻(彼女)には何も言わなくても自分の想いを察してくれると信じる、無邪気な一面を持っています。しかしその子供のような無邪気さは、意見のすれ違いを許せなかったり、どんな自分でも女性は受け入れるべきだという硬直した考えを招きます。
女性は恋人である自分の弱さを察して理解すべきであり、それが出来なければ当然の報いとして鉄拳による制裁が待っているのだ、なぜならこんなにもお前のことを想っている俺を、お前はわかろうとしないのだから――殴った俺のほうが、よっぽど胸が痛いんだ!!!!
相手を受け入れ共に生きるには
ロマンチックの延長線上には暴力がひそんでおり、支配と恋愛は紙一重の関係です。
私たちは男性を拒否して生きることも出来ますし、殴られる覚悟で正面からぶつかっていく道もあります。しかし出来れば優しい男性と仲良く平和に暮らしていきたいですよね。
女性を傷つけズタズタにするかも知れない男性の弱さを、愛しいと思って受け入れて一緒に暮らしていくには、私たちは一体どうすればよいのでしょう?
男の夢を否定しない
女性の目から見たら、しょうもない憧れに身を焦がして周囲を巻き込んで破滅する男性が、100億%間違っているように思えるでしょう。しかし男性をいくら否定したところで、一度抱いてしまった信条は、他人がちょっとやそっと働きかけたところで変えることは出来ません。
男性を「腐れヅラ野郎」などと好きなように思っていて構いませんので、とりあえずそのまま受け入れてみるところから始めてみましょう。
「私がちゃんと説得すれば、彼はきっと変わってくれるはず!」と思うことは、「愛しているなら俺を受け入れろ!」と女性相手にこぶしで語る男性と大して変わらないことに注意してください。悲しいですが、相手を変えることは困難です。なぜなら心は自由だからだ!(あ言っちゃった、オスカル様ぁ♡)
弱くても決して見捨てないと伝える
人が頑なになってしまうとき、実はどうしようもない恐怖心に身動き出来ないだけ、という場合がままあります。「洗濯物をたたんだら男じゃなくなっちゃうッ!」という男性は、妻から見限られる不安に追い詰められているのだと先ほどお話しました。
これに対して妻が「くだらねぇこと気にしやがってケシの穴の小せぇ野郎だな! あたいをバカにしてんのかいッ?!」と熱烈なベーゼ(キ…キスのことだよぉ♡)でねじ伏せるのも一興ですが、そこまでの熱量は自分にはないと思う方は次の方法がおすすめです。
とりあえず否定しない
前者よりも時間のかかる方法ですが、とりあえず彼が何をしようがあなたに害のない限り、淡々と受け止めてみてください。長く過ごせば相手の色々なところが見えてきます。
トイレットペーパーを大のたびに丸ごと一個使うとか、冬になると家にいるときはいつも鼻にティッシュを詰めているだとか、気に入らなかったり理解できないこともたくさん出てくるでしょうが、出来るだけ反応しないか、面白いと言って笑うことで違和感を表現してあげてください。
情けない自分をさらしてもパートナーから否定されないとわかれば、男性は見捨てられる不安から解放されますし、「家事なんてゼッタイしないんだもんッ☆」と意地を張る必要がなくなります。かっこつける必要がないなら、家事は”特別な仕事”ではなくなるので普通に出来るようになります。
またそうしているうちに、女性の側も今まで抱いていた異性への憧れもほどよく壊れていきますので、かっこ悪い人間同士が支えあうという、恋愛の一番おいしいフェーズへ移行していくことが出来ます。
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新しい「男らしさ」を刷り込む
男性が古い世代の男らしさにしがみつくのは、「昔の男」は面倒な内省をしなくても手軽にいい気分になれるお得な型だからという理由だけではなく、何を手本にしたらウケるのかよくわからないからという理由も大きいです。
男性が女性のウケを必死で気にしてお手本を探しているなんて、信じられない方もいらっしゃるかも知れませんが、男性も女性と同じように「愛され〇〇」を目指して日々頑張っています。ただ彼らは女性と違って、異性の発するリアルな意見には耳を貸さず、「俺の思う”女”が好きになるような男♡」を目指しているのでわかりにくいのです。
家事/育児をする男はセクシーだと伝える
「体にいいから野菜食べなよ!」と言っても聞きゃしない男性でも、「これ食べて元気になって、私を歓ばせて……♡」という言葉にはビクンビクン反応してしまうものです。相手と自分は違う価値観を持っているのですから、人を動かしたかったら相手の物語に沿う言い方をしたほうが成功率が高いです。
ですから男性に家事をさせたい場合は、↓のツイッターのように「女性は家事をする男をセクシーだと思っている」と伝えることもよいテクニックだと思います。
#夫が家事育児をすると妻から男として見られなくなるですっていいえそんなことはありませんほら家事育児をしている男の人がこんなにセクスィーな画像をどうぞ
「家事なんかやって当たり前」と言われたらただただ腹が立ちますが、「家事をする男に抱かれたい」と言うのであれば、俄然ヤりたくなるのが人間というものです。しかしここで注意しなければならないのは、エサにしているのはあなたの肉体ではないということです。
人間をもっとも動かすのは、「価値ある自分になりたい」という飽くなき欲望です。これを前にしては、性欲なんて1ちんひ゜く♡にしか過ぎないということをよく覚えておいてください。
弱さを許せるのが本当の強さ
男性にとって女性と付き合うことは、パンドラの箱を開けるようなもの。同性同士の付き合いでは、男性はあまり互いの内面に目を向けて気持ちを語り合うことがないため、マイナスの感情にふたをしたまま過ごすことが出来てしまいます。
女性とかかわらなければ、男性は自分とちゃんと向き合わなくても人間関係をやりすごせるので、勘違いして自信を持って過ごすことも出来ます。しかしその反面、悩みを抱えてしまうと誰にも打ち明けることが出来ずに、問題が深刻化する傾向が強いと言えます。
男性の自殺率が高いのは
みじめに生きるくらいなら死んだほうがマシ――この言葉が男性の自殺率が女性より2倍以上も高いことと直接関係があるかはわかりません。しかし自分の欠点やいたらなさと向き合うことを死ぬより怖いとするこの一文は、男性の心をよく表していると思います。
自分の弱さを見て見ぬフリをして強がって生きる男性にとって、弱いことを受け入れて生きる女性は、自分とは相容れない存在です。男性の価値観をそのまま女性に適用して、「弱音を吐く負け犬」と見下す男性もいますし、また虚勢を張ることに疲れた男性は「女はいいよな、甘やかされて」と嫉妬と侮蔑の混じった目を向ける人もいます。
弱さを許容できる社会に
私たち女性が男性に伝えなければならないのは、「弱さを許せるのが本当の強さ」だと言うことです。「健康な普通の男」が家事もせず長時間働くことを想定して成り立つ社会は、女性や障害のある人だけでなく、健康な普通の男性の首もいずれ締めることになります。
男性が自分の弱さを認められない社会では、年をとって影響力を失った自分への怒りをもてあます老人が大量に発生してしまいます。その相手をしなくてはならない周囲の人たちも大変でしょうが、男性本人も狭い価値観から抜け出せなくて、みじめで辛いと思うのです。
手をつないで生きていく
男性と女性は同じ社会に生きていながら、まったく違う価値観を持っています。一方は優遇されて走り続けることを強要され、もう一方は閉じ込められてはいるものの檻の中では自由です。この価値観で日本を運営するのはもう限界にきていて、変えなければならないし、いずれ勝手に変わっていくでしょう。
しかし男女に対する価値観がいくら変化しようとも、人間から完全に「支配・被支配の関係」を取り除くことは出来ないのです。「男女が対等になったら解決☆」だったら簡単でよかったのですが、それだけでは女性も男性と同じように、力を持ったら他人を都合よく動かそうとするようになるだけなので、状況は改善したとは言えません。
負けたまま幸せになる技術
私はあなたがたに、負けたまま幸せになる技術を磨いてほしいのです。私たちが苦しいのは男性に比べて経済/社会的成功が得にくいことが一番ですが、胸を押しつぶすような不公平感が原因でもあるはずです。一言で言うと、「男ってズルい!私って無価値なの?」という気持ちですね。
男性がズルいのは確かですが、思うようにうまい汁を吸えている男性はほんの一部で、結構な割合の男性は勝ってるようで勝ててないんじゃないかと思います。私たちもまた男性と同じように、「損をしている自分という虚像」に苦しめられてはいないでしょうか。
もし思い当たるところがあると感じるなら、まずこの考えを手放してみましょう。社会構造を変えることは一人では出来ませんが、心持を変えることは今すぐにでも出来ます。自分の心がラクで明るくなれることを最優先に考え、心を縛る正しさや価値観は、腹のたしにならないものとして捨ててしまいましょう。
人と人とが対等である関係は理想ですが、同性の友人とだって上下関係が自然にできて、それが逆に安定した付き合いやすさにつながるケースはよくあります。恋愛に限らず、人間関係とは結局お芝居なのです。「この役はイヤ!」と言っているだけじゃ失敗してしまうばかりか、舞台に上がることすら出来ないのです。
上手に負ければ感謝される
負けを認めて弱者としてしたたかに生きる女性に対し、意外にも男性は憧れと感謝の目を向けます。「さァて、負けた奴は盛大に踏みにじってもいいんだな!」と単純に思うわけではないところが男女の味わい深いところですね。
安定した人間関係を築くには、互いに何らかの役割を演じることが必要で、確かに「男が上、女が下という型」は維持しやすいテッパンなのです。結婚生活は小さな決断の連続なので、何を決めるにもいちいち合議していたら、時間がかかりすぎてすぐに破綻してしまいます。上下関係があることで時間を大幅に削減できるので、これはこれでコスパがいいのです。
とはいえ下になるのは誰だって嫌なものですし、あまりにもうまくこなし過ぎると、男性が女性が演じていることを忘れて勘違いする場合もあります。しかし自分をわきまえて人を立てるのは技術が必要ということを、男性だってよくわかっています。
経済力をつけ勉強をするなどして、いつでも関係を解消できるようにしておくことは、男女関係におけるあなたの立場を有利にするのでしっかり準備しておくことが必要です。しかし女性には利用できる制度や仕組みは全部使い倒してもらって、こだわりや正しさから解放され、出来る限りラクに生きてほしいのです。
- 正面からぶつかるより、相手の弱みにつけこんで時間をかけて懐柔するほうがラク。
- 男はコントロールされていい気分になるのが実は好き。
- 女が強者になろうとすると抵抗が大きいので、弱者の戦法も身に付ける。
- 誰にでも何かを信じる権利があると認める。
- メリットに注目し、利用できることが幸せに生きる技術。
- 踏みにじられても相手への憐れみを忘れないこと。それが心を清潔に保つ技術。