大森靖子『マジックミラー』歌詞の解釈と考察|アイドルからの強烈なホモソ批判

ホモソーシャル

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今回ご紹介したい『マジックミラー』(作詞/作曲大森靖子)は、2015年の『マジックミラー/さっちゃんのセクシーカレー』に収録されています。

「さっちゃんのセクシーカレー」のほうは、TVアニメ「食戟のソーマ」エンディングテーマです。

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大森靖子「マジックミラー」のPV


PVに描かれるストーリー

PVはアイドルファンの男性が、満面の笑みを浮かべ会場に入っていくシーンから始まります。


はっきりとは描かれていませんが、おそらくこの女性のファンなのです。孤独な毎日ですが、ひたむきに頑張るアイドルの笑顔が心の支え。

しかし、華やかな表の顔とは裏腹に、アイドル業の現実は厳しいものでした。

セクハラまがいの撮影、そのあとに待つ公衆トイレでの奉仕など、体を使った営業が当たり前のように行なわれている現実。


ある日、スタジオに呼ばれて来てみると、部屋にはAVの撮影の準備が整えられていました。

このままアイドルを続けていても…。

生活のことを考えれば、彼女に断るという選択肢は残されていませんでした。


アイドルがA\/に出演したことを知り、男性は絶望します。

しかし女優になったところで、大きな違いがあるわけではありません。

アイドル時代だって、ほとんどタダでご奉仕させられていたんですから…。

提供する商品が「手の届かない清純」から、いよいよ「消費される清純」に変わっただけ。

どっちにしろ、汚されることが予定された青春でした。

アイドルは、男が目をそらしたがる現実を全身で受け止めて、ボロボロになって光っていたのです。

「マジックミラー」で語られる”視線”への批判

ホモソーシャル

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ホモソーシャル(男の絆)とは

私は『マジックミラー』を聴いて、アイドルの目線に立った強烈なホモソーシャル批判だなぁと思いました。

社会学者の上野千鶴子氏によると、ホモソーシャルとは性的主体(と認めあった者)同士の連帯です。

つまり「俺ら、ヤる側の人間だよな?!」という仲間意識に支えられたモロい男同士の絆のことです。

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しかし「男社会」に入るには、女をモノにして一人前の男、つまり自分がヤる側の存在だと証明しなければなりません。

なぜなら男を欲望する男を仲間にしてしまうと、自分がヤられる側(女の地位)に貶められてしまうかも知れないからです。

ヤられる側になったら、男の地位には居られません。

こうやって必死で”男”でいようと頑張ると、だんだん女が”ヤられる何か”にしか見えなくなり、人間だと思えなくなってしまうのです。

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『マジックミラー』の歌詞:私の解釈

あたしアナウンサーになれない

あたしアナウンサーになれない

きみも色々してきたくせに

どうやって息をするのが正解だったか教えて

引用:『マジックミラー』大森靖子

結局、アナウンサーみたいな、男に望まれる完璧な女にはなれなかった。

あんただってやりたい放題やってきたくせに、どうして男だってだけでインチキ自己肯定できちゃってんの?

※インチキ自己肯定とは、男だというだけで根拠のない自信を持つこと。AV監督の二村ヒトシ氏が著書「すべてはモテるためである」で提唱した。

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正解にたどり着けなかった私は、全然自分が肯定できなくなって、もうどうやって息していいかもわかんなくなったのに。

絶対安全ドラッグ
この歌あたしのことうたっている
気持ちいい E E E あーん

引用:『マジックミラー』大森靖子

私だってみっともなく自己陶酔したり、性欲だってある生々しい人間なのに。

彼氏いないとハブられるし 夜じゃなきゃバイトもできないし
引用:『マジックミラー』大森靖子

世間や友達から、女の子は恋愛するもんだってなんとなく圧力かけられる。

かわいくするにはお金がいるのに昼間は学校に行かなきゃなんない。

大体、「女の子は恋愛☆」って言いながら、競争には勝てってどういうこと? どっちかにしてよ!

どうして女の子がロックをしてはいけないの?

引用:『マジックミラー』大森靖子

女の子はロックみたいに、ちゃんとした人生ってレールから外れることだって、すんなりとは認められない。

音楽をやっても、顔、体、恋人がいるかどうか、いいお母さんになれるかどうか、って「女としてどうか」で測られてしまう。

表現には注目しないで「かわいくない」「(女なのに)ちょっとキツすぎる」「なんちゃって〇〇」って、結局女はモテるためにやってるだけってなんなの…

素直な子が好きだって言うから

素直に生きてるだけでしょ さみしい

いままでの嘘全部ばれても あたしのこと好きでいてね

引用:『マジックミラー』大森靖子

かわいい子のワクからはみ出さないように、必死になって生きてる。

君の幻想を壊さないように頑張ってかわいくしてるから、実態がわかってもその努力を認めて、好きでいてね?

きっとキライになるって、ほんとはわかってるけど。

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モテたいモテたい女子力ピンクと

これ以降の部分は、以前記事にまとめました。

女の子が一方的に、清純担当とセクシー担当に分けられてしまう苦しみについて書いてみたので、ぜひ読んでください。

清純な私とエロい私は切り離せるわけじゃない溺愛されて喜んでる場合じゃないという話。立ち向かってこない安全な相手と思われてるだけ。

マジックミラーの外に出てきてよ!

ネットで『マジックミラー』のレビューを読んでいた時、サビの

あたしのゆめは君が蹴散らしたボロボロのLIFEを
掻き集めて大きな鏡をつくること

引用:『マジックミラー』大森靖子

の部分について、

ファン

大森靖子は男の救世主。ぼくを映して肯定してくれる魔法の鏡なんだネ!
と言ってる男性ファンを目にしたんですよ。

それを見たとき、女がこんなに「バラバラに消費されて、人間扱いされなくて苦しい!男の欲望を映す”何か”にされて苦しい!」って泣き叫んでるのに、男は「そこまでして俺のことを…救世主!」と受け取るんだなぁと絶望したんですよね。

どこまでも行っても自分は尽くされる側だと思ってて、大森靖子の歌に共感して感動したって「女の子を消費するのやめよう」って方向にはならないんですよ。

血を吐くように歌っても、あくまでもエンタメにされてしまう、男と女の間に横たわる闇の深さよ!

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弱さを認め合える関係へ

上に出した、ピンクの部屋で抱き合う男女は、映画『万引き家族』から引っ張ってきたものです。

女の子は、マジックミラー越しに男に乱れた姿を見せることでお金をもらっているんですけど、オプション料金を払えば客が女の子側に行くことも出来るようなんですね。

そこで直接話したり触れ合ったりするうちに、なじみの客が自傷癖のある、言葉がうまく話せない少年だってわかったんです。

それを知った女の子は、「痛いね」って優しく男の子を抱きしめるんですけど、マジックミラーで隔てられていたら弱みを見せ合ってなぐさめるなんて出来ないんですよね。

まとめ

まとめ
  • ”男”になるのに精いっぱいで女のことなんか考えられない
  • 女の苦しみに共感したって、結局エンタメとして消費してしまう
  • 清純な女を求める構造が、アイドルを闇に突き落す
  • マジックミラーの内側で見てるだけだから満たされない