大幅にリライトしました!

大森靖子『新宿』歌詞の解釈と考察|都会で生きる女の貧困と搾取

女のコだけがもらえるポケットティッシュ

女のコだけがもらえるポケットティッシュ

今回ご紹介したい『新宿』(作詞/作曲大森靖子)は、2013年発売の1stアルバム「魔法が使えないなら死にたい」に収録されています。

大森氏の歌を聴くと、高確率で涙を禁じ得ないんですけど、この『新宿』のPVは特にヤバい。

気付いたら嗚咽して歯をガチガチ鳴らしている自分に気付くくらい、わかりみが深すぎて死にそうになります。

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大森靖子『新宿』の歌詞:私の解釈


みんなのうたはだれのうた?

きゃりーぱみゅぱみゅ

みんなのうたは だれのうた?

B.L.Tみたいな CanCamみたいな

ジャンプ spring smartなうた

引用:『新宿』作詞/作曲大森靖子

街で流れる女の子の歌は、みんなとっても楽しそう。

でも毎日をあんなふうに謳歌してる女の子なんてどこにいるの?

流行歌は女性誌みたいに、私に≪モテろ or 死≫を突き付ける。

でも、絶望と悔しさにまみれた私の気持ちは、誰も歌ってくれないの。

「みんな」から疎外される女

当り前の「みんな」の中に、女性のリアルな感情は入れてもらえない。

「みんな」にひそむ暴力性を、見事に表現しています。

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女のコだけもらえるティッシュ

女のコだけがもらえるポケットティッシュ2

女のコだけがもらえるポケットティッシュ

女のコだけ もらえる ポケットティッシュ

私のおまもり

汚れてもいいの

引用:『新宿』作詞/作曲大森靖子

街でもらう風俗の勧誘のティッシュ。

どうしてもお金がなかったら…。

誰も頼る人のいない、私のおまもり。

だって故郷には帰らない。帰れないから。

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ポケットティッシュは比喩じゃない

ところで、この「女のコだけもらえるポケットティッシュ」というフレーズなんですが、

アイト

ポケットティッシュの使い方が間違っている。ティッシュはおまもりじゃないでしょ。難解な詩だなぁ

と、真顔で言っている男の人が何人かいました。

女からしたらティッシュは全然比喩でもなんでもなくて、わりと身近な求人広告です。

今は規制が厳しくなったけど、昔は繁華街ではピンク色のティッシュがよく配られていたし、その手のスカウトを受けた友達の話もそのへんに転がっていました。

男の人がなーんにも考えないで歩くすぐ隣で、女は体を換金しろと誘われ続けているのです。

給料低くて実家だってクソ 換金するしか

グロテスクだなぁと思いました。

男の人はそれが視界に入っているはずなのに、自分も店を利用しているのに、それが隣の女の子の現実であるとは思いません。

こっちは給料低くて雇用も不安定で、実家だってクソで誰も頼れないから、都会にいる限り体を換金するって誘惑と四六時中戦わなきゃならない。

「私のおまもり」というフレーズは、実家という何されるかわかんない密室に戻るくらいなら、都会で搾取されるほうを選ぶ女の決意を歌っていると、私は思いました。

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新宿が好き 汚れてもいいの

あの街をあるく

才能がなかったから

私 新宿が好き

汚れてもいいの

引用:『新宿』作詞/作曲大森靖子

田舎には、若い女が自由に生きられる空気なんてなかった。

地元で”いいお母さん”とかに収まれる才能があったら…って思う。

けど、地元の仲間とだって、だんだん話、合わなくなっちゃったし。

女が否定されずに暮らせるのは東京だけ。最終的に、この街に吸い尽くされることになっても。

田舎で生きる”才能”

私は「才能がなかったから」の才能が、2つの意味になるように使われていると感じました。

都会に生きる才能と、田舎で生きる”才能”。

後者は、娯楽と買い物と文化がすべてイオンに集約される土地で、仲間と足並みを揃えて生きる”才能”のことです。

さみしさや経済的状況は都会でムリして生きるより、ちょっとはマシになるかも知れない。

しかし女にとって”みんな”の望む存在でいるということは、結婚して子供を産み、最終的には親の介護を期待されることなのです。

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いい大学とか気にせずに

生活保護で

はしからはしまでみつあみをした

女と遊んで

いい大学とか気にせずに

君のこと好きだよ

引用:『新宿』作詞/作曲大森靖子

浮気性でよくわかんない女と遊んでる、”普通”じゃない彼氏。

結婚とか子供のことを考えると絶望しか感じないけど、”普通”のロクでもなさは身に染みてわかってる。

うちだって世間じゃ”普通”のいいうちだったけど、実際は家族が父親のサンドバッグになってた。

相手の女も生活保護でイカれた格好(やたらみつあみ)してるけど、彼氏も自分も”普通”のレールに乗れなさそうなのは同じ。

”普通”の席はもう空いてない。それに、”普通”になんてなりたくない。

”普通”の席なんてもう空いてない

「生活保護」の女や「いい大学」じゃない浮気性の彼氏を描くことで、いわゆる”普通”になれない今の状況があぶりだされます。

”普通”とは親世代が思う、ちゃんとした結婚のことです。

それを「気にせずに」「君のこと好き」なのは、”普通”を拒否したい気持ちと、選択肢なんて本当はない現実を直視して、諦めざるを得ないじゃないって歌ってるのかな、と受け取りました。

ギターのほうがかわいいんだもの

もしもいつか

子供がうまれても

ギターのほうが かわいいんだもの

引用:『新宿』作詞/作曲大森靖子

新宿にいる限り、母親になってもやりがいのある仕事や趣味の機会に恵まれる。

少なくとも、「ギターのほうが子供より大事!」と言える自由くらいはある。

でも田舎で母親になったら、ギターなんてもう一生触ることすら出来ないかも。

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あの愛にうずくまる才能がなかったから

あの愛にうずくまる

才能がなかったから

私 あなたが好き

誰でもいいの

引用:『新宿』作詞/作曲大森靖子

「あの愛」=親とのしがらみ

私は「うずくまるような愛」を、親とのしがらみと解釈しました。

育てた恩とか愛情で、子供を絡めとるような親の愛。

感謝してないわけじゃないけど、帰ったら子供のときのように支配されて、未来を奪われてしまいそうです。(「うずくまる」感じ)

誰でもいいの?

そんなイエから引き離してくれる男なら、本当は誰でもいい。

また、同時に「誰でもいいの?」と男に問いかけているようにも聴こえます。

金で女から「かけがえのないあなた」を買いたがる男は、自分のイカれっぷりを自覚しているのでしょうか?

吐き捨てるように歌われる「誰でもいいの」は、男との生活を”違う地獄にスライドするだけ”と思っているようにも、空虚なかけがえのなさを求める男への批判にも聴こえます。

「かけがえのなさ」幻想に対する批判

女にとって結婚とは、しがらみや生活苦から抜け出す手段にしかすぎず、相手は「誰でもいい」のかも知れない。

男だって究極のところ「誰でもいい」から、金で女が買えるのです。

こうして靖子氏は、”かけがえのない関係”が幻想にすぎない現実を暴いてしまうのです。

女は”かけがえのなさ”の夢を見せられて、一方的に”いい子”を強要されているのですから。

まとめ

まとめ
  • 女の貧困と搾取の現実は、男にとって”難解な詩”
  • そもそも消費の対象としか思われていない
  • 不特定多数の女から「かけがえのなさ」を金で買う気持ち悪さ
  • 女に一途であることを求めるくせに、自分はルール違反が当然。